法人設立の方法・法人登記(会社登記)とは?手続きの手順と基礎知識

先日は個人事業主を始めるための開業届の提出や確定申告に関する記事をアップしました。

今回は個人事業主の次のステップである法人設立、いわゆる「起業」の手続きについてまとめていきます。
「個人事業主の次のステップ」と書きましたが、個人事業主を経ずに起業(法人設立)をする方もたくさんいらっしゃいます。
逆に法人設立をせずに個人事業主のままビジネスを継続する方もいらっしゃいます。
その辺りの個人事業主と法人の違いやメリットデメリットも含めてアウトプットしていきたいと思います。

法人登記(会社登記)とは?

法人登記(会社登記)とは、会社を設立する際に決定した商号(社名)、本社所在地、代表者の氏名や住所、事業目的といった会社に関する情報を法務局に登録し、一般に開示できるようにする手続きを指します。

設立した会社の情報を一般に開示することで会社の信頼性を図り、安心して取引してもらうことを目的とします。
ここでの取引とは法人同士(BtoB)もそうですし、一般消費者(BtoC)でも言えることです。

情報を開示する、と書きましたが、厳密には設立する会社の種類等によって開示する情報は異なってきます。(上場企業はより厳しくなる)

会社の種類としては「株式会社」をはじめ、持分会社(合同会社、合資会社、合名会社)、一般社団法人、一般財団法人、特例有限会社、NPO法人などがありますが、それらすべての法人において登記を行なう必要があります。

法人と個人の違い

法人で会社を経営するのと個人事業主で事業をする際の違いやメリット、デメリットをまとめていきます。
法人のメリット、個人のメリットをそれぞれまとめていきますので、その逆がデメリットだと思って頂ければズレはないでしょう。

法人のメリット

法人登記(会社登記)とは?のところにも書きましたが、一番は「信頼」です。
たとえひとりカンパニーだったとしても、個人なのか法人として事業をしているのかで他人から見える信頼は大きく変わります。
もちろん、法人だからと言って安心して信頼を失うようなことをしては意味が無いですが、やはり「法人じゃないと取引出来ない」といった会社や法人だから申し込みできるサービスなどはあります。

あとは個人事業主に比べて経費として認められる範囲が広くなります
代表的な例では、個人事業主の場合、自分の給料は経費になりません。
しかし、法人の代表あるいは役員になると「役員報酬」として毎月決まった額の報酬(給料)を受け取ることができ、会社としてはその役員報酬を経費にすることが出来ます。
要するに自分自身の仕事の対価である役員報酬(給料)が会社にとっては必要経費である、とみなされるのです。

他では法人専用のクレジットカードが作成できたりします。
法人カードを作ることで個人カードと分けることが出来るので、管理がしやすくなります。

あとは細かいところで、法人しか登録できないサービスだったり、法人割引のような法人だからこそ受けられる恩恵もあります。

いずれにしても、会社の規模をある程度大きくしていくことを考えるなら、いずれは法人を設立したほうがトータルで判断してもメリットになります。

注意

会社の規模とは必ずしも社員をたくさん雇って人数を増やすという意味だけでなく、売上が大きくなるといった「扱うお金が増える」や「取引先が増える」といったことも含めての会社規模という意味です。

個人のメリット

個人のメリットは、やはり意思決定のしやすさ、フットワークの軽さと言えます。
少し抽象的な表現になってしまいましたが、例えば自分のお金と事業のお金はある程度一緒くたになるので、お金の移動がしやすいです。

一方、法人のお金は原則として勝手に口座から引き出して使うことは出来ません。(複数の口座間で移動するだけや小口金として使うといった明確な目的や理由がないといけません。)

これらはお金の扱いに関する例ですが、明確な違いとしては法人税が発生しません
法人税はその名の通り法人に課される税金で、たとえどんな規模の会社であれ、最低でも年間7万円程度は発生します。
これは赤字だろうが関係なく、法人として活動しているだけで課される税金です。

こうした必ず発生する税金が個人事業主にはありません。
利益が出ていれば所得税がかかりますが、損金との相殺で繰り越しが出来たりと調整することで無課税で済むという時もあります。

また、社会保険に加入しないので、毎月の保険料も法人よりは安く済みます
法人を設立すると社会保険と雇用保険への加入が義務となるので、その分だけ毎月の出費も大きくなります
この辺りは詳しくは割愛しますが、役員報酬の金額に応じて保険料も変わるので、役員報酬をいくらに設定するかも重要です。

毎月の固定費が少なくて済むというのは経営において重要な要素ですので、この辺りは法人より個人の方がメリットと言えます。

法人設立の手続き

では、実際に法人を設立するための手続きに必要なものたちをまとめていきます。
この辺りは絶対に必要なことですので、これから法人を設立したいと考えている方は予め準備したり、考えておいてください。

法人(会社)の概要を決定する

どんな会社を設立するのか、その概要を決定します。
具体的には以下のような項目になります。

  • 商号(会社名)
  • 本店所在地
  • 発起人
  • 取締役
  • 事業目的(事業内容)
  • 資本金
  • 事業年度

これらは全て定款に記載することになります。
詳しくは「定款を作成する」のところで補足していきます。

会社の印鑑を作成する

会社名が決まったら、会社の印鑑を作成します。
街のはんこ屋さんでもいいですし、最近だとオンラインでも作成できます。

絶対に必要なのは代表印(法人の実印)と銀行印(法人の銀行用)です。
あとは角印もあった方がベターです。3点セットですね。

よくあるのは、起業する際に印鑑を作る人が多いので、「起業セットプラン」みたいなパッケージで角印とゴム印をセットにして少し安くしてくれる場合もあります。

代表印と銀行印は物凄く大事な印鑑なので、使用する場面も重要書類に限定されますが、それ以外の見積書や請求書などで印鑑を捺したい場合に角印が使えます。ゴム印は郵送物や印刷物に捺す手軽なものです。

印鑑証明書を取得する

会社の印鑑が出来たら、法人の実印にするために印鑑登録を行ない、印鑑証明書を発行します。
管轄は法務局です。この作業をしないと印鑑を作っても代表印としての効力が無いので必ず行ないます。

法人の印鑑証明書は法人の設立時や金融機関からの借り入れ時をはじめ、各種サービスの申し込み時に求められる場合があります。
この辺りは個人の印鑑証明書と同じ役割と言えますね。

定款を作成し提出する

定款とは会社の概要をまとめた書類です。
「法人(会社)の概要を決定する」のところに記載した内容をまとめていきます。

商号(会社名)

商号(会社名)はその名の通り社名です。
基本的には自由ですが、強いて言えば2番目の「本店所在地」と全く同じ住所で全く同じ社名の会社は設立できません
当たり前と言えば当たり前ですが、注意すべきはレンタルオフィスを使う場合ですね。
レンタルオフィスで住所だけ借りる場合、その住所に複数の会社が存在することになるので、社名によっては重複する可能性はあります。
事前にレンタルオフィスの人に確認して、重複が無いかヒアリングしておくと良いでしょう。

注意

法律上は「同じ住所に同じ会社名」でなければOKですが、現実的には「近隣エリア」に気を付けるべきです。特に店舗を構えて看板を出す場合、既に近隣エリアに同じ名前で同じような事業をしている会社があると紛らわしいので、先にいる会社から訴えられる可能性はあります。

発起人

発起人とは代表者のことで、株式会社を設立するなら取締役がいるかどうかも決めます。合同会社なら取締役会は無いので取締役も無しです。

事業目的(事業内容)

定款の中でも特に重要な項目が事業目的(事業内容)です。

その名の通り、会社が事業として行なう事業内容を記載するのですが、注意すべきは「事業目的に記載された内容以外の事業をしてはいけない」というルールです。

これも当たり前と言えば当たり前ですが、定款に記載した事業内容を行なうのが法人の決まり事です。
なので、例えば不動産に関する記載が全くない会社が突然不動産売買や不動産賃貸業などを始めること、などが該当します。
言い換えれば「定款に記載した目的に違反する」ということになりますが、厳密には罰則はありません

ただ、実際に事業をする上で定款に記載していない事業をすることはいずれマイナスになる可能性があるので、少しでも事業として取り組みそうな内容は記載しておいたほうがベターです。

あまりに多過ぎると「この会社は何をしている会社なのか」と疑われることもありますが、後から追加(変更)すると費用が発生するので、最初に設立した時に「少しでも」可能性がある事業は記載しておきましょう。
また、「附帯関連する一切の事業」という表現はかなり便利です。この辺りは行政書士や司法書士とも相談しましょう。

事業年度

個人事業主の事業年度は1月1日~12月31日で、翌年の2~3月にかけて確定申告を行なうと決まっています。
一方で、法人の場合は事業年度を自分で自由に決めることが出来ます。いわゆる「〇月決算」というやつです。

特に何月が決算でも大差はないですが、多くの会社がキリの良い12月や3月、4月辺りを決済月にしている傾向にありますので、担当する税理士の都合で時期が被ると忙しくなる、というのはあります。
最悪、税理士によっては新会社が忙しい3月とかに設定しようとすると断られる場合もあります。

なので、もし設立時に顧問税理士が決まっていれば相談するのが有効です。

細かい話をすれば、決算月の前後で売上が大きく変動するような月に設定する、あるいは避ける、という判断もあります。
あるいは決算作業は決算月の翌月~翌々月がメインになるので、そこが繁忙期に被らないようにする、といった判断ができます。

いずれにしても、ここは税理士に相談するのが得策です。

会社の銀行口座を開設する

ここまでの準備が出来たら、いよいよ法人の銀行口座を開設します。
資本金を支払う必要があるので、必ず登記を行なう前に開設しなければいけません。

基本的には最寄りの金融機関(本店所在地の近辺)となりますが、もし今後融資を受ける予定がある場合は、融資を受けたい金融機関で口座を開設しておくとスムーズです。
具体的には、設立したばかりの会社なら政策金融公庫、地方銀行、信用金庫のいずれかになります。
政策金融公庫なら銀行口座はどこでも大丈夫ですが、地方銀行や信用金庫はそれぞれの口座となります。

POINT

ここでちょっとしたテクニックですが、基本的には最初に融資を受けるのは政策金融公庫が受けやすいです。創業融資ですね。
詳しくは融資をテーマにアウトプットしたいと思いますが、政策金融公庫からの借り入れを入金する口座として、最寄りの地方銀行、あるいは信用金庫の口座にしておくのがオススメです。

つまり、地方銀行や信用金庫から融資を受ける前に銀行口座を開設して「メインバンク」にしておくだけで、銀行にとっては手数料収入が発生する可能性が出てくるので喜ばれます。
その後に追加融資を受ける際に、開設した金融公庫で融資を申し込めば手続きがスムーズに進みます。

もちろん、メガバンクなどにしても全く問題ありませんが、中期的に融資を含めて考えるなら上記の流れがお勧めです。

資本金を払い込む

銀行口座が出来たら、定款で決めた資本金を払い込みます。

注意点としては発起人(代表者)の個人口座から振り込みすることです。
そうしないと、誰のお金が資本金になっているか分からないからです。

また、万が一金額を間違えると面倒なので、必ず間違えの無いように会社の口座に振込しましょう。

法人登記(会社登記)の手続きは専門家に依頼する

ここまでに準備したり作業をしてきたものは確実に必要なものです。
また、この辺りは自分自身、あるいは役員となる会社の中枢を担う人たちで決めたり進めたりする必要があります。

一方、ここから先は実際に法人登記を行なう手続きの段階に入ります。
ここからの工程に関しては、私の意見としては専門家である行政書士や司法書士に依頼すべきです。
なぜなら、時間が勿体ないからです。

もちろん、ここからの手続きも自分でやろうと思えば可能ですが、時間も手間も掛かります。
特に私たちのようなひとりカンパニーであれば、ひとりであらゆる作業や準備をしながら、当然ですが、日々の業務もしなければいけません。
忙しくなるのは当然ですが、だからといって全てを自分ひとりで抱え込む必要はありません

私もそうだったので自戒の念を込めてですが、法人を設立するということは経営者(社長)になるということです。
社長の仕事は何か?を常に考える必要があります。
最初のうちは分かりません。私もそうでした。ありとあらゆることを自分一人でやろうとしてしまいます。

しかし、経営者(社長)にとって重要な仕事の1つは「仕事を作って人に任せる」ことだと考えています。
他にも色々な要素はありますが、これは結構大事な要素であり、私自身もまだまだ修行中です。

こうした観点から、まず最初の第一歩として「法人登記の手続きを人に任せる」という経営判断をしてみることをお勧めします。
「任せる」と言っても行政書士や司法書士を雇うわけではありません。
単発の依頼で会社登記(法人登記)の手続きをお願いすれば、数万円で対応してくれます。
また、司法書士や行政書士は多くの会社と付き合いがありますので、今後も何かと相談できる立場の人たちです。そうして人たちとのパイプを作る意味でも依頼するのが私は良いと考えています。

ちなみに、私がお願いした行政書士の方をご紹介することもできますので、もしお困りの方はご相談ください。(個別サポートを受けていない方でもご紹介可能です。)

経営者として一番知っておくべきこと

会社登記(法人登記)をすると、いよいよ会社を設立して「起業」を果たすことになります。
恐らく実際に起業した人にしてみると、意外とあっさりしてるという感覚もあるかもしれません。
私も、確かに個人事業主の時よりは色々と準備もあったので「起業している感じ」はありましたが、それでも実際に起業してみるとあっさりしているものです。

とはいえ、法人になっても個人でも事業を継続し、反映させていくことに変わりはありません。
ただ法人において最も重要なことは、より経営者としての意識、判断、意思決定が求められることです。
個人事業主でも多くの意思決定が必要ですが、法人はその規模が徐々に大きく、金額も大きくなったりします。

とにもかくにも重要なことが1つあります。

それは現金を確保しておくことです。

会社はどうなったら倒産すると思いますか?

赤字になったら?
売り上げが落ちたら?

正解には「現金が無くなったら」です。

厳密には、現金が無くなることで取引先への支払いや銀行の返済、クレジットカードの引き落としが出来なくなってしまうことです。
極論ですが、一時的に銀行口座が0円になっても会社は潰れません。何億円という赤字を計上しても潰れません。
しかし、それに近い状態が続き、支払うべきものが支払えなくなると、会社は倒産します。

法人を設立するという華々しいスタートの記事で、マイナスなことを言うのも何ですが、これは事実です。

ですから、法人を設立した時から、より一層、現金に対する意識、要は資金繰り(キャッシュフロー)の意識は強く持ってください。

私自身も常に気を付けています。

ちなみに私の個別サポートでは輸入総代理ビジネスに限らず、経営全般に関するサポートや資金繰り(キャッシュフロー)改善に関するサポートも可能な限り対応しています。

物販事業に限らず、過去には店舗経営の経験もありますので、経営全般でお困りの方は是非ご相談ください。
私自身もそうでしたが、ひとりで考え込むよりも人に相談したほうが確実に状況は良くなります。

そういった意味でも経営者になって、より一層「必要な人脈作り」も重要になっていきますね。

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