アメリカと日本で決定的に違うクラウドファンディングの始め方・考え方

日本で少しずつ認知度が上がってきているクラウドファンディング。
起案したことがある事業者は少ないかもしれませんが、支援したことがあるという支援者の方は多いのではないでしょうか。
商品やサービスのリターンのみならず、災害などの寄付金としてもクラウドファンディングが使われるようになり、その裾野は広がっているように感じます。

このブログは事業者向けですので事業者の立場で発信していきますが、クラウドファンディングを起案するにあたって考えていきたいテーマがあったのでアウトプットしていきます。

私が取り組む輸入総代理ビジネスでは海外メーカーと販売契約を結んで海外の商品やブランドを日本国内に持ってくる(輸入する)というビジネスになります。特に多いのが海外のクラウドファンディング。具体的にはアメリカのクラウドファンディングであるKickstarterやIndiegogoといったクラウドファンディングプラットフォームで起案しているプロジェクトから日本上陸を目指すメーカーとタッグを組むことが多いです。

海外メーカーと契約を結ぶまでにはメールや通話などで交渉をするわけですが、交渉において大事な要素の1つにクラウドファンディングの始め方や考え方に関する違いがあります。

ということで今回はこれから海外メーカーと交渉して契約を取りたい方や、なかなか交渉しても契約が取れないという交渉に課題を持っている方を中心にクラウドファンディングの考え方について深掘りしていきます。

米クラウドファンディングの始め方・考え方

先ほども書いたKickstarterなど、アメリカ発のクラウドファンディングはクラウドファンディングの元祖とも言われています。
日本のクラウドファンディングは基本的に日本国内を対象としていますが、KickstarterやIndiegogoは全世界を対象としています。そのためプロジェクトを実行している事業者はアメリカはもちろん、ヨーロッパやアジアなど世界中のメーカーやデザイナーが起案しています。

ここでプロダクト系の米クラウドファンディングの始め方や考え方を見ていくと、アメリカのクラウドファンディングはメーカーや工場が商品開発のためにプロジェクトを実行しているケースがほとんどです。

つまり米クラウドファンディングを始める事業者は製品の生みの親、まさにゼロから商品を企画、デザイン、そして実際の製造までを行なうことが多い傾向にあります。

そのためか、リターンを提供する時期もプロジェクト終了から半年くらい掛かることは普通で、中には1年、あるいは2年くらい掛かってようやく届くという場合も決して珍しくはありません。

まさしくモノづくりをするための資金調達としてクラウドファンディングを活用していると言えます。そういった背景もあるので、起案されているプロダクトは珍しいものや画期的なもの、革新的な技術や素材が使われているといった「他にはないもの」が多く存在します。

全世界を対象としていることもあり、総支援額が1億円を超えるプロジェクトもたくさんあります。日本のクラウドファンディングで1億円超えは数えられる程度しかありませんが、アメリカのクラウドファンディングではザラです。

まさしく規模もワールドワイドですし、クラウドファンディングに対する考え方も「ゼロからのモノづくり、商品開発」という考え方を持ってクラウドファンディングを始めていると言えます。

日本のクラウドファンディングの始め方・考え方

日本のクラウドファンディングの始め方や考え方は、アメリカのクラウドファンディングに比べると違います。

日本のクラウドファンディングは一言で言えば「予約ショッピングサイト」になっています。確かに国内のメーカーや工場、職人さんが新しい商品を開発するためにクラウドファンディングを活用することは多々あります。ただ、それは開発費が足りないから資金調達をするといった考え方よりも、需要や反応を見るためのテストマーケティングのようなイメージが強いです。

その1つの証拠として、目標金額が数十万円のプロジェクトがたくさんあります。本来、ゼロからモノづくりを始めて開発費を調達するのなら、数百万円あるいは数千万円することも珍しくないはずです。

しかし、日本のクラウドファンディングはあくまでも予約ショッピングサイトと考えれば、目標金額は売上目標と言い換えることもできそうなイメージです。

要はその商品を販売することは決まっており、あとはそれがどれだけ売れるかどうか、という考え方が近いと言えます。

アメリカと日本のクラウドファンディングの違い

ここまで読んでいただければお分かりいただけるかもしれませんが、アメリカのクラウドファンディングはゼロからの製品開発であり、クラウドファンディングの成功あるいは失敗によって、その商品自体が完成するのかどうか、販売されるのかどうかが左右される意味合いがあります。

日本のクラウドファンディングの場合、商品そのものは既に完成しているか、完成することは間違いなく、あとはクラウドファンディングでどれだけ売れるか(予約を取れるか)という意味合いになっています。

クラウドファンディングの違いを理解して交渉する

このようにアメリカと日本では同じクラウドファンディングという言葉を使ってはいるものの、その本質や考え方は異なるように感じます。

ここで実際に交渉の話になります。

海外メーカーと交渉する際に「私たちはあなたの商品の輸入代理店となって日本で販売します。その第一歩としてクラウドファンディングをします」といった内容の戦略を伝えます。
すると、海外メーカーからすると「なぜクラウドファンディングをするのか?もう商品は完成しているじゃないか」といった考えを持つ人が珍しくないのです。

彼らにとってのクラウドファンディングとはゼロからの商品開発であり、それは既に終了している。商品は量産体制に入っているから、更にこれから資金調達をする必要はない、という認識なのです。

しかし私たちにとってクラウドファンディングはリスクを抑えて資金調達を行ない、更にテストマーケティングもできて重宝するものです。すでに完成している商品をクラウドファンディングすることで予約を集め、後からまとめてオーダーして日本で展開していくことになります。

こうした日本のクラウドファンディングの意味合い、役割をきちんとメーカーに伝えることが重要です。
そうしないと、場合によってはメーカーに誤解を与え、「クラウドファンディングはもう私たちが行なっているから必要は無い」と断られるケースもあります。

まとめ

海外メーカーと交渉すると、ちょっとしたニュアンスの違いや文化、商習慣の違いなどで意味が通じないことも珍しくありません。
今回のクラウドファンディングの違いも、ある意味で日本とアメリカの商習慣の違いとも言えます。

クラウドファンディングの本質と言う意味で考えればアメリカのクラウドファンディングが正しいように感じます。
とはいえ、それを日本では形を少し変えて浸透してきていますし、それが悪いわけではありません。実際に日本でも商品開発のためにクラウドファンディングを活用する人もたくさんいます。

ただ、特に海外メーカーと交渉や契約をして輸入する輸入総代理ビジネスの場合、日本とアメリカのクラウドファンディングの違いを理解しているのとしていないのとではコミュニケーションに差が出てくることがあります。

同じクラウドファンディングというワードが使われてはいますが、その実情や中身は異なることを理解しておくとよいでしょう。

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