昨日(2019年12月11日)、クラウドファンディングプラットフォームMakuakeを運営する株式会社マクアケが東証マザーズに上場しました。
日本国内のクラウドファンディングプラットフォームでは初の上場となります。
このブログでも「どのクラウドファンディングプラットフォームを利用すべきか?」というアウトプットや議論は常々してきました。業界的にも同じで、私が所属する輸入商社コミュニティPIUでも「どれがいいの?」という話はよく出ます。
プラットフォームごとに特徴や強み弱みがあって、プロダクトによって相性の良いクラウドファンディングを選択してくるのが今までの流れでした。
今回のMakuakeの上場を受けて大きくすぐに何かが変わることは無いと思いますが、直近の傾向や動向を踏まえて今後の国内クラウドファンディングがどう変わっていくと考えられるか。
あくまでも私の見解にはなりますが、同業の経営者から聞いた話なども踏まえてアウトプットしていきます。
Makuakeの上場
改めてになりますが、クラウドファンディングプラットフォーム「Makuake」を運営する株式会社マクアケは12月11日、東証マザーズ市場に上場しました。
※2019年12月11日放送テレビ東京「WBS」より引用
株式会社マクアケは2013年5月にサイバーエージェント内の新規事業を担う子会社として「サイバーエージェント・クラウドファンディング」という社名で設立されました。
その後、サービス名(プラットフォーム名)「Makuake」の認知度が高まったこともあって2017年10月に社名を現在の株式会社マクアケに変更して現在に至っています。
公募・売り出し価格は1,550円でしたが、昨日の最高値は3,170円、終値は2,980円となり予想を上回る株価を付けました。
もともと国内でクラウドファンディングを手掛ける会社としては母体が大きな会社(サイバーエージェント社)でしたので大企業的な企業風土があり、その中でもベンチャーらしさがあるという印象がありました。
とはいえ、国内クラウドファンディングプラットフォームとしては後発組。そもそもクラウドファンディング自体がまだ黎明期ではありましたが、後からの参入でも上場は初となりました。
※2019年12月11日放送テレビ東京「WBS」より引用
そういった意味で親会社の知名度とマクアケ自体のベンチャーらしさ、先進的な取り組みはこれからも注目を集めることでしょう。
このブログは株式投資を扱っているわけでは無いので詳細には触れませんが、今後も株価は堅調に上がっていくものと思われます。
最大の理由はビジネスモデルで、マクアケの収益は起案者の支援総額による手数料です。
決済手数料も込みではありますが20%になっていますので、これは仲介する手数料としては高い方です。起案数が増えて支援額も伸びているため、それに付随して売上も伸ばしています。
※2019年12月11日放送テレビ東京「WBS」より引用
そもそも日本のクラウドファンディングプラットフォーム自体が全体的に手数料が高く設定されているので業界標準ではありますが、例えば1000万円のプロジェクトなら200万円がMakuakeの収益となります(決済手数料は計算していません)。
私たちのように商品を仕入れて販売するビジネスモデルは在庫(商品)が売れれば収益が上がりますが、在庫リスクも伴います。
そういった意味でプラットフォーム運営はビジネスモデルとして強力です。
懸念事項があるとすれば炎上案件です。これについては後程詳しく説明しますが、もし炎上案件が起きてイメージダウンすれば株価も下がるでしょう。
Makuakeが頭一つ抜けてきたか
国内のクラウドファンディングプラットフォームはMakuakeのほかにCAMPFIRE、GREEN FUNDING、Readyforなどがあります。
中でも私たちのような商品を販売する場合、購入型クラウドファンディングに分類されます。
購入型クラウドファンディングという意味ではMakuake、GREEN FUNDING、Machi-ya辺りが主力となっています。
なので、自然と何か新商品のクラウドファンディングを実施しようと考えれば上記などのいずれかに絞られます。
中でも「MakuakeかGREEN FUNDINGか」という判断がこれまでの主流でした。
今回、マクアケが上場したことでマクアケは市場からの資金調達が可能になりました。
昨日、中山社長がメディアの取材で資金の使い道を問われていましたが、そこで「機能面の充実」「サービス向上」と話していました。
※2019年12月11日放送テレビ東京「WBS」より引用
確かにMakuakeは以前に比べてプロジェクト実行までの準備がスムーズになっています。管理画面が一新され、ほとんどの準備がWEB上で完結するようになっています。
ただし課題もあって、実際にクラウドファンディングを開始してからのアクセス分析やコンバージョン分析はMakuakeに依存するしかありません。
GREEN FUNDINGはGoogleアナリティクスの設定やFacebookピクセルの設定が可能なので自社分析が出来ます。
もしその辺りの機能を付与してくれるのであればMakuakeの機能はかなり充実すると言えます。
ただし、そういったタグ(HTML)の設定権限を実行者に渡してしまうと、サービス自体に影響する不具合が発生する可能性もあります。当然ですが万が一サービス停止ということになれば大問題で、株価にも直結します。
中山社長が仰っていた機能面の充実がどういった形になるか分かりませんが、いずれにしても国内クラウドファンディングプラットフォームの中ではMakuakeが頭一つ抜けてきた印象があります。
もともと集客力があり、更にここ最近はInstagramでのライブ配信を活用するなど、起案者のプロジェクトをMakuake側が後押しする工夫をしている印象があります。
他のプラットフォームでもそれぞれの後押しはありますが、総合的にMakuakeが力を付けている印象で、起案者にとっても支援側にとってもクラウドファンディングプラットフォームとしての地位を着実に確立してきている印象です。
Makuakeのメリット・強み
では、改めて具体的にMakuakeを利用するメリットや強みをまとめていきます。
支援する側のメリット
まず支援する側のメリットとしては、上場によって知名度が上がれば、これまで以上にプロジェクト数が増えることが考えられます。
これまで「クラウドファンディングは知っていたけど自分たちには関係ない」と思っていた企業が手を挙げる可能性は考えられます。
私たちは輸入ビジネスで輸入品を扱っていますが、購入型クラウドファンディングでは国内製品でもプロジェクトは可能です。
また、購入型以外にも店舗やサービスの立ち上げも可能ですので、プロジェクト起案数自体が底上げされる可能性があります。
そうなれば支援する側にとっても「面白そうな商品やサービス」の選択肢が増えることになるのでメリットといえます。
※起案者側にとってはデメリットになりうるので後述します。
機能面の充実
上場の最大の目的は資金調達です。
資金調達をしたい企業をサポートする企業だったマクアケが、まさに自分自身の資金調達に成功した格好になります。
それはさておき、上場して資金調達ができれば、今まで出来なかった施策が可能になるでしょう。先ほども書いたように社長の方針として1つに機能面の充実が語られていました。
※2019年12月11日放送テレビ東京「WBS」より引用
インタビューでは抽象的な表現だったので具体的にどういった内容なのかは分かりませんが、少なくともこれまで以上に使いやすくなることは間違いないでしょう。これは支援者側でも起案者側でもメリットになり得ます。
あとは実際にどういった機能が実装されるのか、その点は注目です。
集客力の強化
起案者側のメリットとして、Makuakeは集客力がある点は以前からの強みでした。
今回の上場によって、より世間に対する知名度が増すこと(ニュースなどで報道されるなど)で単純にサイトへのアクセスも増えます。
また、上場企業は東証マザーズとはいえ「公的に認められた会社」の仲間入りと言えます。
もちろん非上場企業が認められていないという意味ではなく、見えない信頼感という意味です。
信頼感が増すので、今までクラウドファンディングは不安だしよく分からないと思っていた消費者が支援者として増加する可能性は十分に考えられます。
要はMakuakeの利用者が更に増えることが考えられ、結果として起案者にとっても支援が伸びる可能性が広がる点はメリットといえそうです。
Makuakeのデメリット・弱み
メリットは支援者側、起案者の双方にありましたが、デメリットは主に起案者側にあると考えています。
審査の厳格化
既にここ1~2年くらいからの傾向ではありますが、今まで以上に審査が厳しくなっています。
そして上場したからには、それがより厳格化することはあっても、緩くなることは無いでしょう。
具体的にはPSEマーク、技適、Wi-Fi(電気通信事業)、食品衛生該当商品といった事前審査や事前認証が必要な商品は確実にこれらをクリアしなければなりません。
現在は「プロジェクト中に認証を通す」や「終了後に認証を通す時間も含めてスケジュールを組む」ということも可能です。
しかし、今後は「プロジェクト実行前の段階で認証を通しているか、確実に通る段階で無いとスタートできない」という流れに変わる可能性は考えられます。
この記事を書いている2019年12月時点では技適、PSEは「リターン配送まで」に完了、提出すればOKとなっています。
要するにMakuakeとしては「商品が問題なく確実に生産され、輸入通関され、支援者に届くこと」を最重要視しています。
先ほども書いたように、万が一プロジェクトが失敗(目標金額は達成したけどリターンが提供できない)した場合、上場した以上、株価に直結します。
小規模ならまだしも、大規模案件が炎上しようものなら株価は下がり、株主からの批判は避けられません。
この点は上場企業である以上は避けて取れない要素であり、であれば会社としてより一層のリスク回避をしていくのは当然です。
Makuakeの歴史を紐解けば、上記のような大型の炎上案件がいくつかあった歴史があります。
Makuakeの批判をしたいわけでは無いので詳細は書きませんが、資金を集めたまま会社が倒産してリターンが提供できなかった案件や、リターンは配送したけど品質が大問題で、プロジェクトページに記載した商品とはかけ離れている(要は使い物にならない)商品を提供した案件などです。
単に金額が小さければいいという問題でも無いですが、これらは数千万円規模の案件だったので支援者も多く、炎上しました。
特に黎明期は炎上案件が珍しくなく、その当時を知る人からすればMakuakeの印象は決して良いものでは無いでしょう。
そういった過去もあることから審査の厳格化を行ない、よりクリーンに、より確実に進める傾向になることは間違いないでしょう。
表現の規制が厳しい
審査の厳格化と似たような要素ですが、プロジェクトページでの表現も以前に比べてかなり規制が厳しくなっています。
例えば「世界最高」とか「日本最大」といった表現がNGになるのは分かります。
ここ数年の傾向で言えば「日本初上陸」はNGとなりました。「日本初」を証明することが出来ないからです。
その他にも「○○より2倍長持ち」みたいな数字を用いる場合、その証明となる書類を提出する必要があります。
とにかくちょっとでも誤解を与えそうな表現は「証拠を出してください」となるので消費者に刺さるキャッチコピーはなかなか使えなくなります。
プロジェクト数が増えて埋もれる
以前からMakuakeはプロジェクト数が多いことで知られていますが、上場を機に起案者が更に増えることは考えられます。
その分だけ自社のプロジェクトは埋もれてしまう可能性が高くなります。
これは以前からそうですが、ただ「出すだけ」ではダメで、メルマガに掲載してもらうように依頼したり、自社でも積極的に情報発信したり、広告を出稿したりと自社の努力は必要不可欠です。
これは前からそうなので特段大きな変化では無いですが、この傾向は今後も続くでしょう。
予約制ショッピングサイト化
Makuakeに限らず、日本国内のクラウドファンディング自体がそうですが、もはや予約制のショッピングサイト化していることは間違いないでしょう。
購入型クラウドファンディングの先駆けである米国のKickstaterは「本当のモノづくり」を支援するためのサービスです。
つまり、「こんな商品を0から作っています、だから支援をください」という純粋なクラウドファンディングです。
そのため、クラウドファンディングを実行する時点では商品が完成しておらず、試作品の段階であるパターンが多いです。
ここ最近はKickstaterでも完成品に近い状態でプロジェクトを実行する案件も増えてきました。
それもそのはず、やはりKickstaterでも炎上案件があったからです。
要するに支援金額は集まったけど商品が完成しなかった、あるいは当初のスペックを満たせなかった、といった失敗です。
とはいえ、まだまだKickstaterにも0からの開発を目指す新進気鋭のメーカーや開発者が起案しています。
一方で、日本のクラウドファンディングは商品が完成することは大前提。新商品で量産体制が出来ていないから時間をくださいね、といったニュアンスで起案します。つまり開発ではなく予約です。
また、クラウドファンディングには商品開発以外にもテストマーケティングの要素があります。
文字通り市場で販売する前の段階で製品の反応を確かめることが可能です。
テストマーケティングとしての機能はそうですが、デメリットで書いた厳格化が進めば進むほど「リスクの低い商品」しか出回らなくなり、結果として単なる予約制の値引き販売になりかねません。というより、既にそうなりつつあります。
これが私が最も危惧していることです。
単なる予約制のショッピングサイトであればチャレンジできることは減り、支援者も「支援者」ではなくなります。もはやただの「購入者」あるいは「予約者」であり、Amazonや自社サイトの予約販売と大差なくなる可能性があります。
人と同じことはしない
ちょうど先日も「人と同じことをしないほうがいい」という記事を書きました。
まさにクラウドファンディングについても同じことがいえます。
冒頭に書いたように今回のマクアケ上場によって、すぐに何かが変わるということはないでしょう。
しかし、日本国内におけるクラウドファンディングの動向は確実に変化しています。
以前は「クラウドファンディングをやるだけで凄い」といった雰囲気もありましたが、もはやそれは1つの選択肢でしかありません。
むしろ「あえてクラウドファンディングはやらない」という選択肢が成功する可能性も十分にあります。
プラットフォームの選び方についても、「あえて」Makuakeを避けてGREEN FUNDINGにコミットする、といった考え方が成功する可能性もあります。
私自身もプラットフォームの選び方は常に考えをもってやってきましたが、自分自身の考え方も変えていき、コミットすることが必要な時が来たのかもしれません。
Makuakeが上場した、このタイミングはMakuakeにとっても利用者にとっても良い波であることは間違いないでしょう。
少なくとも株価は今のところ良い波であることを示しています。
そこで良い波に乗ることは多くの人が考えることだと思います。
であれば、あえてその波には乗らず、人とは違うことをするという決断をしてもいいのではないでしょうか。
何事もそうですが、人と違うことをする、人と違う道を進むことは苦労や困難があります。
既に道が出来ている山道と獣道のような道、当然後者の方が険しい道のりです。
しかし、その先に見える山頂の景色は、険しい道を選んだ人にだけ与えられる絶景があるかもしれません。
今回マクアケが上場したことで私なりに考えることもたくさんありました。
そういった意味で、今回アウトプットできて自分の頭も整理できました。
これからのクラウドファンディング市場、プラットフォームの動向は引き続き注視しながらアウトプットしていきます。
合同会社FRONTIER TRADE代表社員。
一人でも出来るビジネスを通じて一生涯に渡って稼ぎ続ける情報を発信するメディア「ひとりカンパニーのススメ」を運営。自らもひとりカンパニーとして輸入総代理ビジネス、Webサイト構築、メディア運営、YouTubeなどに取り組む。